「コンポシティオ」(2024年12月号) インタビュー記事邦訳

ピアニストの高橋絵里子にとって、幼少の頃から音楽は生活の一部であった。ピアノ教師の母親のもと、自然とピアノを弾き始めた。「それに、家族は毎日クラシック音楽を聴いていました」と高橋は話す。「家の中ではいつも音楽が流れている、そのような環境で育ちました」
演奏家として、高橋は現代音楽やあまり知られていない作品に強い関心を抱くようになった。「現代音楽だけでなく、様々な時代のクラシック音楽も演奏しています」と彼女は言う。「最も好きな時代は19世紀後半から20世紀前半にかけてです」

桐朋学園大学音楽学部を卒業後、高橋はオーストリアに渡り、そこでピアノソロと室内楽の勉強を続けた。またグラーツ音楽大学にて、アンサンブル「クラングフォルム・ウィーン」のもとで現代音楽を学んだ。高橋は、ピアノは現代音楽にとって非常に多面的な楽器だと言う。弦、フレーム、ペダルをクリエイティブに使用し、さまざまな方法で音を出すことができる。「特殊奏法の中では、弦に触れて倍音を出す奏法が気に入っています」と彼女は説明する。「ピアノを打楽器のように弾く作品もありますが、鍵盤を激しく叩くのはあまり好きではありません」彼女の演奏は、エレガントで明快、知性と感情の両方を持ち合わせていると評されている。

高橋は、フィンランド人作曲家による作品も含め、多くの現代作品をレパートリーに持つ。彼女は 11月1日、フィンランド・日本間の音楽交流やコラボレーションを促進する団体「フィンジャ・ミュージック (FinJa Music)」が主催する演奏会で、アリ・ロンパネンのピアノ作品「インテルメッツィ」を初演した。高橋は、日本とフィンランドの美学にいくつかの類似点を見出している。「これはもちろん私の個人的な見解ですが、フィンランドと日本の文化はどちらも自然に深く影響を受けていると思います。これは音色、音、色彩、ハーモニー、そして音楽における沈黙や、音のない時間をどのように扱うかにも影響を与えていると感じます」

高橋絵里子は2018年からアリ・ロンパネンと協働している。「彼の作品は『複雑』であるとか『難しい』とよく言われますが、その複雑さの下には常に明確な構造とメッセージがあると思います」と彼女は言う。「彼の他の作品と同様に、『インテルメッツィ』はビッグバンを連想させる巨大なエネルギーから星の光のような繊細さまで、ある種の宇宙的な次元を有しています。作曲家はこの作品の中で、これまでの大規模な作品に比べ静寂や繊細な音に重点を置いたと話しています。倍音が象徴的に演奏されるエピローグは特に興味深いです」

ロンパネンのピアノ作品に加えて、高橋絵里子はカイ・ニエミネンやセッポ・ポホヨラなど、フィンランドの過去と現代両方の作曲家の作品を演奏してきた。「尤もそれらは初演ではありませんでしたが。しかし今はニエミネンの新作を楽しみにしています」と彼女は言う。「私がこれまで演奏してきた現代作品は、どれも独自の特徴と性格を持ち、とても楽しんで演奏することができました」

2025年3月には、マデトヤ、パルムグレン、コッコネン、ニエミネン、ロンパネンの音楽を収録した、フィンランドのピアノ作品による新アルバム(レーベル:ALM Records)をリリース予定。

インタビュー:ハンナ・イソランミ (Hanna Isolammi)

フィンランド作曲家協会会誌「コンポシティオ」2024年12月号、P. 45

(邦訳:高橋絵里子)